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東京高等裁判所 昭和44年(行ケ)133号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(本件審決を取り消すべき事由の有無について)

二 当裁判所は、次に説示するとおり、本件審決には、これを取り消すべき事由があるとする原告の主張は、理由がないものと判断する。

1 本件特許の出願公告公報に掲載された明細書によると、本件特許の明細書の「特許請求の範囲」の欄には、「研削式精米機の前方行程に一台もしくは数台の噴風を行わない摩擦式精米機を配設し又その前方行程に一台もしくは数台の噴風摩擦式精米機を配設しこれ等を直列行程に連絡した精米装置」と記載され、その「発明の詳細な説明」の欄には、まず、第一文に、この発明が特許請求の範囲に記載のとおりの構成の精米装置であると記載し、次いで、発明の目的および作用効果として、第二文に、「この装置は精米の合理化を計るものであるが一般に玄米は滑面を呈しているために精米の初期において摩擦式精米作用では摩擦係数が不足し負荷も加わり難く充分な能率が得られないからこの発明のように高速度の研削速度を有する研穀式精米機によつて能率的に玄米表皮(「麦皮」とあるも明らかな誤記と認められる。)に瑕を附けて摩擦係数を増大した後無噴風の摩擦式精米機で強圧を加えて精米すると米粒糠層が厚層に剥離されるから能率が高く且この精米の主行程をなすこの行程迄は噴風を行わないから米粒の附着糠が米粒相互の摩擦係数を増加して一層精米能率を高めこの次行程(「主行程」とあるも「次行程」の誤記と認められる。)において精白室局部に噴風を行ない空冷と同時に附着糠を清掃し光沢のある低温美麗な精白米となすものである。」、また、第四文に、精米機を上記の構成配列とすることにより、「各々その特性を発揮して精米を最も合理化し高能率、高歩留で低温美麗な精白米を精白し得る効果を有している。」とそれぞれ記載されており、これらの記載に徴すると、本件特許の発明の要旨は、特許請求の範囲の欄に記載されたとおりの精米装置にあるものと認められ、本件特許の発明において各精米機の企図する作用効果は、(一)研削式精米機にあつては、次行程の無噴風摩擦式精米機における精米を能率的ならしめるため、平滑面である玄米の表皮に瑕をつけて摩擦係数を増大させること、(二)無噴風摩擦式精米機にあつては、瑕つけられた米粒糠層を厚層に剥離するほか、無噴風とすることにより米粒の附着糠で摩擦係数を増加させて精米の能率を高めること、(三)噴風摩擦式精米機にあつては、噴風により米粒を空冷し、同時に附着糠を清掃し、精白した米粒に光沢を与えることにあるものと認めることができる。

原告は、本件特許の発明において、直列行程に設置、連絡する精米機は、研削式精米機は一台で玄米を一回通過させるのみであること、無噴風摩擦式精米機は、一台まれに二台であること、噴風摩擦式精米機も同様一台まれに二台であることを要件とする旨主張し、本件特許の発明の要旨を限定的に解釈するけれども、前認定の特許請求の範囲の記載および作用効果に照らすと、本件特許発明の要旨をそのように限定的に解釈することは、とうていできない。

2 一方第一引用例は、昭和二五年一二月一八日の出願公告にかかる「無水及混水併用式精麦装置」なる発明の特許公報であるところ、それには、一機または数機よりなる無水式研削(研磨)系統の搗精機の次に一機または数機よりなる混水式摩擦系統の搗精機を装設したことを特徴とする無水混水併用式精麦装置が記載され、その「発明の詳細なる説明」の欄の記載によると、この特許発明は、まず、(一)無水式研削系統の搗精機により玄麦の荒皮および膠質層を研削搗精し、次いで、(二)混水式摩擦系統の搗精機により前記研削機により研削搗精されて粗鬆となつた麦粒を混水により表面組織を軟化せしめ、核心部は依然硬度を維持した状態で搗精するものであり、このように両搗精機の特性を活用することにより、従来の方法に比し、歩留り良好で精白率を向上させ、精麦能率の増進を可能としたものであることを認めることができる。

また、第二引用例は、昭和三四年五月一四日の出願公告にかかる「精米装置」に関する考案の実用新案公報であるが、それには、摩擦式精米機の上方に研削式精米機を一体的に並置し、研削式精米機の排出口を摩擦式精米機の入口に直通的に連絡した構成の精米装置が示され、その「実用新案の説明」の欄には、従来の円筒摩擦式精米機では、通常玄米を直接精米機に送るため、最初の二、三回はほとんど糠立てがなく、したがつて、一〇回位循環的に繰り返して精白するのが普通であり、このため砕米が多く歩留りを低下させるとともに精白所要時間と消費動力を増大せしめるのみならず、摩擦熱を発生して米が変質する等の欠点があつたが、本装置は、この欠点を除き、僅か二、三回精米機を通すことにより所要の精白を可能とすることを目的としたものであり、まず、(一)研削式精米機において、米穀の表面を研削して糠立てを生ぜしめ、次いで、(二)米粒を糠立てとともに摩擦式精米機に送り込み、摩擦式精米機において、最初から米粒とともに適度の糠を存在せしめることにより、空摩擦作用がない有効な精白作用を可能とするとともに砕米を少なくし、摩擦熱による欠点をも除去するという作用効果を奏しうるものであることが示されている。

3 そこで、右認定の第一引用例および第二引用例の構成および作用効果に示された技術思想と本件特許の発明において研削式精米機と摩擦式精米機とを直列行程に連絡し、各精米機の特性を活かし、前認定の作用効果を奏すべくした技術思想を対比すると、第一引用例および第二引用例に開示されている次行程における摩擦による搗精の能率化を図るため、まず、最初に研削式搗精機を使用し、穀粒を研削し表皮に瑕をつけ、その表面を粗面とするという技術思想は、本件特許の発明において、無噴風摩擦式精米機の前行程として研削式精米機を用いる技術思想と全く同一であり、摩擦式搗精機を使用する技術思想も両者同一であるものと認めることができる。

なお、第一引用例は、原告も主張するとおり、精麦装置に関するものであり、研削式搗精を行なう場合、その研削部分が米粒とはおのずから異なるが、それは穀粒としての性質の相違に基づく当然の結果であるから、この相違点を考慮に入れても、叙上の技術思想に関する限り両者同一の発想に基づくものとみるのが相当である。また、原告は、麦の場合は研削式搗精機の数台を要するとか、あるいは、第一引用例では、摩擦式搗精機として、混水式が用いられていることを指摘するけれども、この点も穀粒としての麦の特性に基因するものに他ならず、これがため研削式搗精機を摩擦式搗精機の前行程として使用する技術思想において、差異を生ずものとし難いこと前説示に照らし明らかである。

次に、原告は、第一引用例には、無噴風の摩擦式搗精機が示されており、噴風式でない旨、また、第二引用例には、研削式精米機と噴風式精米機とを連絡することが示されているのみで、無噴風摩擦式精米機と噴風摩擦式精米機を直通的に連絡した点については、何ら示されていない旨主張する。しかし、前記争いのない事実によると、本件審決が、この点の技術思想は第三引用例に示されていると認定したことは明らかであり、第三引用例は、昭和三五年四月全国食糧事業協同組合連合会発行の「小精米所の改善方策の研究その一」なる刊行物であるところ、それには、摩擦式(無噴風)と噴風式の精米機を組合せ使用する例、すなわち、搗精の前半を無噴風摩擦式とし、後半の搗精を噴風式で行なう方法が示され、このような構成とすることにより、無噴風摩擦式精米機により主として精白の白度を、噴風摩擦式精米機により除糠と精米に光沢をもたらすという好結果をあげうる旨の記載があることが認められるから、本件特許の発明において、無噴風摩擦式精米機に噴風摩擦式精米機を連絡することにより企図した技術思想は、第三引用例に開示されていることが明らかである。

4 以上認定したとおり、本件特許の発明の技術思想およびその作用効果は、第一引用例および第三引用例に示された技術思想およびその作用効果を合わせたものと同一であつて、それを超えるものとは認め難いから、本件特許の発明は、叙上各引用例から、当業者が格別の発明力を要せず、容易に発明することができる程度のものであると認めるのが相当であり、これと同趣旨の本件審決には原告主張のような違法の点は、存しないというべきである。

(むすび)

三 以上説示したとおりであるから、その主張の点に違法のあることを理由に本件審決の取消しを求める原告の本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がないというほかない。よつて、これを棄却する

(三宅正雄 土肥原光圀 武居二郎)

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